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下請法とは?わかりやすく解説 歴史や特徴、最新課題、法改正まで!

2022.6.20 更新

「書面を交わして業者に応じてもらったので、違反との認識はなかった。かなり以前からしていたと思う。深く反省し、再発防止に最大限努力する[1]

これは、2012年に、過去最高額となる総額39億円の下請法違反の行為をしたとして、下請法を執行する行政機関である公正取引委員会から勧告や指導を受けた日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)のコメントです。

下請法は、正式名称を「下請代金支払遅延等防止法」と言います。独占禁止法(私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律)を補完する特別法として、1956年日本で初めて制定されました。

日本生協連は、「コープ」ブランド商品の製造委託をしている業者など519社に支払う代金を、値引き販売に協力させる形で不当に減額するなどしていました。これが下請法違反の行為とみなされ、公正取引委員会から違反の勧告を受けたのです(詳細は第4章で解説)。

下請法違反の事例は他にもあります。2021年には、大手自動車メーカーのマツダ株式会社が公正取引委員会から下請法違反の勧告を受け、大きな話題となりました。同社は2008年にも勧告を受けており、再びの違反ということで注目を浴びました。

同社は、自社が販売する自動車等の原材料となる資材の製造を委託する下請事業者3社に対して、管理時給と称した算出根拠が不明確な「手数料」を負担させていました。しかし、同社は下請事業者に「手数料」に対する給付やサービスなどは行っておらず、受け取った「手数料」は、自社の各種取引の支払いなどに充てていました。

さらには、それを金融機関で支払う際の振込手数料も負担させていました。同社が下請事業者に提供させた総額は、5,112万3981円であったということです[2]

同社は公正取引委員会の勧告を受け入れ、下請請事業者に全額返金しました。またプレスリリースでこの件を公表し、謝罪しています[3]

このような下請法違反の件数は、増加傾向にあります。公正取引委員会は、下請法違反に対する指導件数について、2019年度に8,000件を突破し、2020年度には過去最高の8,107件であったと公表しています。

公正取引委員会による指導と勧告には法的な強制力はありませんが、指導は法令違反を指摘することであり、勧告は法令違反の是正を求めることです。勧告を受けた企業は、公正取引委員会のホームページ社名と勧告内容が公表されます。実際、2020年度には4社に対して勧告を行い[4]、詳細を公表しています。

これらの問題の根拠となった下請法とは、どのような法律なのでしょうか。下請法の成り立ちや意義、今課題となっていること考えられる対策を知れば、より理解が深まるはずです。

今回は、下請法の歴史について、コンプライアンスのプロがその発端から最新トレンドまで、歴史を変えたエピソードを交えてご紹介します。

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[1] 日本経済新聞「生協連、支払い不当減額39億円 下請法違反で最大額」,2012年9月25日, https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2504X_V20C12A9CR8000/ (閲覧日:2022年5月10日)
[2] 公正取引委員会「(令和3年3月19日)マツダ株式会社に対する勧告について」,『公正取引委員会』, 令和3年3月19日, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/mar/210319.html (閲覧日:2022年4月21日)
[3] マツダ株式会社「公正取引委員会からの勧告について」,2021年3月19日, https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2021/202103/210319a.pdf (閲覧日:2022年4月21日)
[4] 公正取引委員会「(令和3年6月2日)令和2年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」, 令和3年6月2日, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/jun/210602.html (閲覧日:2022年4月21日)

1. 独占禁止法から派生し、日本で初めて制定された下請法

下請法は、独占禁止法補完する特別法として1956年に日本で初めて制定されました。

独占禁止法には、公正かつ自由な競争の実現のため、私的独占やカルテルの禁止などさまざまな規制があります。これらは、事業者同士の「横のつながり」を重視して定められています。

さらに、商品・サービスが開発・製造され、流通ルートを経て、消費者・ユーザーに届くまでの「縦のつながり」についても、再販価格維持や優越的地位の濫用などに対する規制があります。

しかし、独占禁止法の規定だけでは、優越的地位の濫用のような「縦のつながり」で起こる問題十分にカバーしきれません。つまり、主に大企業を中心とした発注側の立場である親事業者による、中小企業を中心とした受注側の立場である下請事業者に対する不合理な取引や支払い遅延などを、独占禁止法だけでは規制しきれない、ということです。

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そこで、親事業者である大企業の優越的な立場を利用した具体的な取引を細かく制限し、下請事業者である中小企業を保護するため、下請法が制定されました。なお、親事業者と下請事業者の具体的な基準は、3-1で詳しく説明します。

2. 下請法がある国は限られている

独占禁止法は、制定国が130を超えています[5]。しかし、中小企業を保護するための特別法として、下請法を制定している国や地域は限られています。

例えば、米国世界で最も早く独占禁止法を導入していますが、中小企業を保護する特別法はありません。

また、中国の独占禁止法にも、中小企業を保護する特別法はありませんでしたが、2020年7月15日に、「中小企業への代金支払保障条例」が公布されました。中国では、条例と称される法律もあります。これにより、公的機関や大企業などは、中小企業に不合理な取引条件を飲ませることや、中小企業の商品や工事、サービスに対する代金の滞納が規制されるようになり、今後の動向が注目されています。

独占禁止法や下請法は、経済法の分野です。経済法は、経済の安定と発展を図るために、政府が企業の経済活動を規制する法律です。そのため、中小企業をどのように保護するかは、各国政府の中小企業に対する政策の違いが影響していると考えられます。

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次章では、中小企業を保護する政策の一つとして、日本をはじめとした下請法の制定をした国や地域について見ていきます。

[5] 公正取引委員会「「独占禁止法施行70周年を迎えるに当たって ~イノベーション推進による経済成長の実現~」」,『(平成29年7月20日)独占禁止法施行70周年を迎えるに当たっての公正取引委員会委員長談話の公表について』, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/h29/jul/170720_1.html (閲覧日:2022年4月28日)

3. 日本と海外の下請法の歴史

ここでは、下請法を制定している国や地域の代表として挙げられる、日本と韓国、欧州下請法の歴史と概要を紹介します。

3-1. 日本の下請法

日本では、1947年に不公正な取引方法の禁止を含む独占禁止法が制定されていました。しかしその後、高度経済成長期に入ると、事業が急速に成長する過程で、強い立場にある大企業が弱い立場にある中小企業に対して無理な取引条件を強要するなど、不公正な取引が頻発するようになりました。

そこで政府は、中小企業を保護するため、大企業に対して中小企業との取引に関する具体的な義務を明記した特別法が必要であると考えました。そして、1956年下請法が制定されました。

下請法は、発注側の大企業を親事業者、受注側の中小企業を下請事業者定義しています。また、下親事業者と下請事業者それぞれの資本金の大きさと、製造委託、修理委託などの取引形態により、下請法の対象になるかどうかが決まります。

例えば、資本金が5億円の大手メーカーが、資本金1億円の中小企業に自社製品の部品を製造委託する取引は、下請法の対象取引になります。また、下請事業者は、法人ではないフリーランスのような個人事業主も含まれます。

下請法では、中小企業を保護するため、親事業者に対して、下請事業者への支払期日の指定や遅延利息の支払義務に加えて、特に、発注に関して厳格な手続きや禁止事項を具体的に定められています。

例えば、発注は書面により行う義務があり、口頭発注を禁止しています。不当な減額や受取拒否も禁止しています。また、親事業者が実施するキャンペーンに、下請事業者の従業員の参加や協賛金を要請することは、不当な利益提供の要請として禁止されています。

日本の下請法の特徴と事例については、第4章でも詳しく解説します。

3-2. 韓国の下請法

韓国の下請法は、日本の下請法を参考に作られました。下請法が作られた理由の一つとして、日本の独占禁止法に相当する「独占規制及び公正取引に関する法律」(公正取引法)に基づき、1984年、優越的地位の濫用に対する規定を具体化した「下請取引上の不公正取引行為の指定告示」が制定されたことが挙げられます。

この告示の制定後、不正な下請取引として処理される事件数が大幅に増加したため、告示よりも法律によって規制する必要が出てきたのです。こうして、1984年12月、公正取引法の特別法として「下請取引の公正化に関する法律」が制定されました。

背景には、政府が財閥グループに経営資源を集中することにより経済成長してきたことがあります。特に近年は、財閥グループの大企業が中小企業に対して行った、不当な値引き強要などの不公正な取引方法が問題になっていました。そのため、弱い立場の中小企業を保護するために、特に優越的地位の濫用厳しく規制されています。

韓国の下請法には、日本の下請法と同様に、大企業と中小企業との取引において中小企業を保護するため、支払遅延や不当な返品などの禁止が定められています。さらに、韓国では部品産業を中心に大企業と共存できる中小企業の育成を目的としており、日本の下請法では基本的に対象になっていない建設委託なども幅広く対象とされています。

この他、日本の下請法では親事業者のみに義務がある書類保存義務が、下請事業者も対象であるなど、一部日本と異なる規定もあります。

3-3. 欧州の下請法

EUの行政執行機関であるEU委員会は、2000年6月、EU指令「商業取引における支払遅延防止に係る指令」(以下、支払遅延防止指令)を採択し、2011年2月に改正しました。

EU指令は法令の一種であり、EU加盟各国に対する法的な拘束力を持ちます。EU加盟各国は、2013年3月16日までに各国が国内法の制定または改正を行い、施行の上、2016年3月までに欧州委員会に実施状況を報告しました。

支払遅延防止指令が採択された背景には、当時のEU加盟国の財政危機があります。リーマン・ショックや欧州債務危機の影響で、民間企業に加えて公的機関でも支払遅延が恒常化していました。特に、中小企業が大きな影響を受けており、中小企業を保護する必要性が議論されていました。

2000年に採択された支払遅延防止指令では、支払期日の設定が各国に任されていました。そのため、特に財政赤字が大きい南欧各国では支払遅延の問題が改善していませんでした。これを受けて、2011年の改正では、請求書または商品やサービス受領日から30日以内の支払と、30日を超えた場合の遅延利息が義務付けられました。

例えば、フランスでは、2008年に制定された経済現代化法[6]の中に支払遅延防止指令に適合する規定2013年に追加され、実施されています。追加規定には、商品やサービスの支払期日の期限設定遅延に対する損害金の条件などが定められています。

このように、EU加盟各国では、支払遅延の問題から中小企業を保護することを目的として、それぞれ独自に日本の下請法に相当する支払遅延防止に関する法令施行しています。

ここまで、日本と海外の下請法制定の歴史や背景について見てきました。次章では、日本の下請法についてさらに詳しく解説します。

[6] 経済成長を妨げる制約を排除し、雇用の創出や消費者価格を下げることを目的とした法律。例えば、既存企業に向けて、従前は必要とされた法的手続きの一部簡略化などが定められている。
参考)中小企業庁「各国の中小企業政策を巡る経緯と現状」,『小規模企業基本政策小委員会(第7回) 配布資料』, https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/shingikai/syoukibokihon/2014/140131haifu.htm (閲覧日:2022年4月26日)

4. 日本の下請法の特徴と事例

前章では日本の下請法の歴史と概要を解説しました。本章では、その特徴と事例について紹介します。

4-1. 日本の下請法の特徴

日本の下請法の特徴として、定期調査の制度があります。下請法を執行する公正取引委員会と、中小企業に対する行政を担当する中小企業庁は、下請法違反を摘発するために、親事業者と下請事業者に対して定期的な書面調査を行っています。この定期調査は、独占禁止法にはなく、下請法独特の制度です。

定期調査は、親事業者と下請事業者に対し、毎年1回書面によるアンケート形式で行われます。書面調査により問題が発見された場合、公正取引委員会または中小企業庁が、親事業者に対して、立入調査を行うことができます。

また、公正取引委員会と中小企業庁には、それぞれ下請法違反に対する通報と相談の窓口があります[7]。下請事業者は、相談窓口を通して下請法違反の申告や相談をすることができます。この制度は、独占禁止法と同じです。

これらの制度は、下請法違反を迅速に発見し、再発を防止する取り組みとして行われています。

4-2. 過去最高額の下請法違反総額となった日本生協連の事例

2012年、過去最大(2022年5月10日現在)となる約39億円下請法違反が発生しました。

日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)は、「コープ」ブランド商品の製造委託をしている下請事業者519社に支払う代金に対する不当な減額、支払遅延などにより、遅延利息約13.2億円と合わせて、総額38.9億円の下請法違反を行いました。そのため、2012年9月25日、公正取引委員会は、日本生協連に対して、下請法違反の是正を求める勧告を行いました。

日本生協連は、以下のようなプレスリリースを公表しています。

(前略)
日本生協連は長年にわたり、お取引先様とのパートナーシップと信頼関係に基づいて、ていねいに合意をとりながら、コープ商品の開発・提供などの事業を行ってまいりました。また、協同組合として社会的責任経営をめざし、法令順守体制の整備にも努力してまいりました。しかし、下請法の定める親事業者の順守事項についての理解が不足しており、下請法に反する取引形態となっておりました。深く反省し、ご迷惑をおかけしたお取引先様と関係各位に心からお詫び申し上げます。
(後略)

日本生活協同組合連合会「下請代金支払遅延等防止法違反に関するお詫びとお知らせ」,2012年9月25日, https://jccu.coop/info/announcement/2012/20120925.html (閲覧日:2022年5月10日)

本件の下請法違反総額である約39億円は、過去最高額です。また、本件は下請法施行後50年以上を経過した段階でも、適法な下請取引の基準が十分に認識されていなかったことを示しています。

本件の発生を受け、公正取引委員会と中小企業庁は協力して、下請法推進月間の実施や教育資料を充実させるなど、下請法の啓発活動に積極的に取り組むようになりました[8]

しかしながら、最近では、働き方の多様化によって現在の下請法ではカバーしきれない部分が出てきており、さらなる対策が必要とされています。次章で詳細を見ていきましょう。

[7] 公正取引委員会「下請法に関する通報・相談窓口 公益通報者保護」, https://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/kouekitsuhou/sitaukemadoguchi.html(閲覧日:2022年5月10日)
中小企業庁「下請かけこみ寺」, https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kakekomi.htm(閲覧日:2022年5月10日)
[8] 公正取引委員会「(令和3年10月1日)令和3年度「下請取引適正化推進月間」の実施について」, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/oct/211001_gekkan.html (閲覧日:2022年5月10日)

5. 下請法の最新トレンド 増加するフリーランスの保護と下請法改正

フリーランスと呼ばれる個人事業主は、年々増加しています。フリーランスと企業をつなぐ事業を行っているランサーズ株式会社の調査によると、フリーランス人口は2021年には約1,577万人となり、2015年と比較して約640万人増加しています[9]

2018年に働き方改革が始まり、2019年から働き方改革法が順次施行されたことに伴い、従業員に副業や兼業を解禁する企業が出始めました。このことは、フリーランス人口の増加要因の一つと考えられています。

企業が、別の会社に所属し、その会社の許可を得て副業・兼業を行う社員(正社員、契約社員など)に対して業務を委託する場合、個人事業主との取引として下請法の対象になりますので、注意が必要です。

下請法の適用は?副業・兼業の解禁に伴うリスク解説と内製研修の提案

また、2021年3月、政府はフリーランスを保護するために、「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン」[10]を公表しました。

このガイドラインでは、企業と個人事業主との取引が下請法の対象になることを明記しています。また、企業が個人事業主と取引する場合、独占禁止法、下請法、労働法の観点から、守るべき事項を具体的に明記することにより、下請法の順守を啓発しています。

さらに、政府は個人事業主を保護するために、下請法の改正を検討しています。現在の下請法は資本金1,000万円以下の企業からの発注には適用されませんが、実際には個人事業主と資本金1000万円以下の企業との取引は多く行われており、トラブルも多く発生しているからです。

内閣官房日本経済再生総合事務局の調査[11]によると、個人事業主の約40%は資本金1,000万円以下の企業との取引実績があります。さらに個人事業主の約20%は、資本金1,000万円以下の企業との取引による売上が、売上全体の90%以上を占めていると答えています。

また、同調査によると約40%の個人事業主取引先とのトラブルを経験しています。トラブルの内容としては、発注時点で報酬や業務内容が明示されなかった(37.0%)、支払遅延があった(28.8%)などが挙げられています。トラブル経験者のうち、約60%は企業側から書面やメールが交付されておらず、交付されていても取引条件が十分に明記されていなかったということです。

これらの行為に対して、もし下請法が適用されていたら、違法行為とみなされていたでしょう。このような行為が起きないよう、個人事業主下請法対象外の企業から発注を受ける場合にも、下請法と同等の条件が適用されることを目的とした法改正が検討されています。

今後も働き方改革により、個人事業主は増えると考えられます。企業は、個人事業主との取引における下請法の順守を徹底する必要があります。

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[9] 片岡 義明「フリーランス人口は1577万人、経済規模は23.8兆円~コロナ禍で市場が拡大 ランサーズが「フリーランス実態調査」最新版を発表」,『INTERNET Watch』, 2021年11月22日, https://internet.watch.impress.co.jp/docs/news/1368220.html (閲覧日:2022年5月10日)
[10] 内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版」, https://www.mhlw.go.jp/content/000766340.pdf (閲覧日:2022年5月10日)
[11] 内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」,2020年5月, https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf (閲覧日:2022年5月10日)

6. まとめ

下請法は、独占禁止法の特別法として、大企業と中小企業との取引において、中小企業を保護する特別法として制定されました。

独占禁止法は、制定国が130を超えています。しかし、中小企業を保護するための特別法として、下請法を制定している国や地域は限られています。例えば、米国や中国には、下請法のような、中小企業を保護する特別法はありません

日本の下請法は、1956年に制定されました。高度成長期の日本では、事業が急速に成長する反面、強い立場にある大企業が弱い立場にある中小企業に不公正な取引を強いる事例が頻発していました。そのため、中小企業を保護する目的下請法が制定されました。

下請法では、大企業を親事業者中小企業を下請事業者として、親事業者の発注や支払いに対して、手続きを厳格に義務化しています。また、下請事業者に不当な値引きや返品などを行うことを禁止しています。

韓国では、日本の独占禁止法に相当する公正取引法の特別法として、1984年12月、「下請取引の公正化に関する法律」が制定されています。韓国経済は、財閥グループに経営資源を集中することにより経済成長を実現してきました。一方、その過程で立場の弱い中小企業が財閥グループから不当な扱いを受ける案件が頻発しました。そのため、日本の下請法を参考にして、下請法が制定されました。

欧州では、中小企業の保護を目的として、2000年6月、欧州委員会がEU指令「支払遅延防止指令」を採択し、2011年2月に改正されました。このEU指令に基づき、EU加盟各国は、日本の下請法に相当する法令を施行しました。

日本の下請法の特徴としては、定期調査があります。公正取引委員会と中小企業庁は、毎年1回、親事業者と下請事業者に対して、アンケート形式で書面調査を実施しています。この調査で下請法違反の疑いがある場合、公正取引委員会または中小企業庁は、親事業者に立入調査をすることができます。

また、公正取引委員会と中小企業庁には、下請法違反に対する通報や相談ができる窓口があります。
これらの制度は、下請法違反を迅速に発見し、再発を防止する取り組みとして行われています。

日本政府は、増加するフリーランスと呼ばれる個人事業主を保護するために、下請法の改正を検討しています。その理由は、個人事業主の約40%が、資本金1,000万円未満の企業と取引実績があるにもかかわらず、現在の下請法は、資本金1,000万円未満の企業には適用されないからです。実際のところ、下請法違反となる口頭発注が多いことなども問題になっています。

今後、働き方改革により、個人事業主は増えると思われるため、企業は個人事業主との取引における下請法の順守を徹底する必要があります。

今回ご紹介した下請法の歴史とエピソードから、下請法を順守する意義をご理解の上、自社の最適なコンプライアンスの実現に取り組んでください。

参考)
マツダ株式会社「公正取引委員会からの勧告について」,2021年3月19日, https://newsroom.mazda.com/ja/publicity/release/2021/202103/210319a.pdf (閲覧日:2022年5月12日)
公正取引委員会「(令和3年6月2日)令和2年度における下請法の運用状況及び企業間取引の公正化への取組」, 令和3年6月2日, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/jun/210602.html (閲覧日:2022年5月12日)
欧州ロシアCIS課「公的機関の支払い遅延防止へ−EUが加盟国に国内法制定を義務付け−(EU) 」『ジェトロ), 2013年4月8日,
https://www.jetro.go.jp/biznews/2013/04/515e41cf69b68.html (閲覧日:2022年5月12日)
神戸大学大学院法学研究科教授 泉水文雄「諸外国における優越的地位の濫用規制等の分析」,
https://www.jftc.go.jp/cprc/koukai/seminar/h26/37_notice_files/150220opseminar_1-1.pdf (閲覧日:2022年5月12日)
本城 昇「第9章 下請取引の規制」,『韓国の独占禁止法と競争政策』,
https://ir.ide.go.jp/?action=repository_action_common_download&item_id=30482&item_no=1&attribute_id=26&file_no=1 (閲覧日:2022年5月12日)
公正取引委員会「下請法に関する通報・相談窓口 公益通報者保護」, https://www.jftc.go.jp/soudan/madoguchi/kouekitsuhou/sitaukemadoguchi.html (閲覧日:2022年5月12日)
中小企業庁「下請かけこみ寺」, https://www.chusho.meti.go.jp/keiei/torihiki/kakekomi.htm (閲覧日:2022年5月12日)
日本生活協同組合連合会「下請代金支払遅延等防止法違反に関するお詫びとお知らせ」,2012年9月25日, https://jccu.coop/info/announcement/2012/20120925.html (閲覧日:2022年5月12日)
日本経済新聞「生協連、支払い不当減額39億円 下請法違反で最大額」,2012年9月25日, https://www.nikkei.com/article/DGXNASDG2504X_V20C12A9CR8000/ (閲覧日:2022年5月12日)
農業協同組合新聞「日本生協連に38億円強の下請法違反勧告 公正取引委員会」,
https://www.jacom.or.jp/archive03/news/2012/09/news120926-17989.html (閲覧日:2022年5月12日)
公正取引委員会「(令和3年10月1日)令和3年度「下請取引適正化推進月間」の実施について」, https://www.jftc.go.jp/houdou/pressrelease/2021/oct/211001_gekkan.html (閲覧日:2022年5月12日)
内閣官房、公正取引委員会、中小企業庁、厚生労働省「フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン 概要版」, https://www.mhlw.go.jp/content/000766340.pdf (閲覧日:2022年5月12日)
厚生労働省「フリーランスとして業務を行う方・フリーランスの方に業務を委託する事業者の方等へ」, https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyoukintou/zaitaku/index_00002.html (閲覧日:2022年5月12日)
内閣官房日本経済再生総合事務局「フリーランス実態調査結果」,2020年5月, https://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/miraitoshikaigi/suishinkaigo2018/koyou/report.pdf (閲覧日:2022年5月10日)
企業法務ナビ「契約書作成義務の拡大へ、下請法改正の動き」,
https://corporate-legal.jp/news/4253?fbclid=IwAR3_3DV-YVdw_87wSKn4g4zI-sLK5Y6vXN2xHN1zJnJhHSmP8irDtA0-uj0 (閲覧日:2022年5月12日)

Written by

一色 正彦

金沢工業大学(KIT)大学院客員教授(イノベーションマネジメント研究科)
株式会社LeapOne取締役 (共同創設者)
合同会社IT教育研究所役員(共同創設者)

パナソニック株式会社海外事業部門(マーケティング主任)、法務部門(コンプライアンス担当参事)、教育事業部門(コンサルティング部長)を経て独立。部品・デバイス事業部門の国内外拠点のコンプライアンス体制と教育制度、全社コンプライアンス課題の分析と教育制度を設計。そのナレッジを活用したeラーニング教材の開発・運営と社内・社外への提供を企画し、実現。現在は、大学で教育・研究(交渉学、経営法学、知財戦略論)を行うと共に、企業へのアドバイス(コンプライアンス・リスクマネジメント体制、人材育成・教育制度、提携・知財・交渉戦略等)とベンチャー企業の育成・支援を行なっている。
東京大学大学院非常勤講師(工学系研究科)、慶應義塾大学大学院非常勤講師(ビジネススクール )
主な著作に「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー(改訂版民法改正対応)、「第2章 法務部門の役割と交渉 4.契約担当者の育成」において、ブレンディッド・ラーニングの事例を紹介」(共著、第一法規)、「リーガルテック・AIの実務」(共著、商事法務:第2章「 リーガルテック・AIの開発の現状 V.LMS(Learning Management System)を活用したコンプライアンス業務」において、㈱ライトワークスのLMSを紹介 )、「ビジュアル 解説交渉学入門」、「日経文庫 知財マネジメント入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「MOTテキスト・シリーズ 知的財産と技術経営」(共著、丸善)、「新・特許戦略ハンドブック」(共著、商事法務)などがある。

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コンプライアンス対策は、教育をいかにするかがカギです。 ここでは、社員教育を効果的にするためのノウハウをご紹介します。

コンプライアンスを整える

コンプライアンスへの対応は、知識を持つだけではなく、具体的に対策や体制作りに活かしていくことが大切です。 実践に向けて、ぜひこちらの記事をご参考にしてください。

コンプライアンスが
楽しくなる!

ゲーミフィケーションで実践する
教育の仕組みづくり

カードを集めながらストーリーを進めるだけで身に付く、新感覚な解説書。社員教育にもおすすめな一冊。