コンプライアンスを 教える

M&A担当者を育てる方法とは 独占禁止法の基礎知識と事例学習がカギ

2023.10.17 更新

もしあなたの会社が他の企業とM&A(Mergers and Acquisitions)を行うことになったら―。

対応できるスタッフはいますか?

M&Aは、欧米で盛んというイメージをお持ちかもしれませんが、最近は企業の成長のために有効な事業戦略の一つとして、日本でも積極的に行われています。

鎌田実築氏、M&A総合研究所 M&Aアドバイザーは、今後のM&A業界について、次のように述べています。

日本のM&Aは海外に比べると歴史が浅いものの、レコフデータが行った調査では、2019(令和元)年に日本の上場企業が関連したM&A件数は過去最高の4,088件にもおよび、2018(平成30)年の3,850件と比べて約6.2%となっています。8年連続で増加し続けていることから、日本のM&Aが年々活発になっていることは明白です。

M&A総合研究所「M&A業界の動向まとめ!マップ形式で紹介!」,2020年8月24日,https://masouken.com/M&A業界の動向(閲覧日:2020年10月13日)

あなたの会社も、いつかM&Aを行うかもしれません。

M&Aは、弁護士事務所や会計事務所などの専門家と連携して行いますが、社内でM&Aの基本を理解して企画し、実際に推進するスタッフが必要です。

そして、そのスタッフは、独占禁止法に対する基礎知識を持っておくことも重要です。

例えば、2016年に話題となった東芝関連のM&Aにおいて、独占禁止法が与えた影響について、次のような指摘が報道されていました。

東芝は9日の取締役会で医療機器子会社、東芝メディカルシステムズの売却先としてキヤノンを選んだ。キヤノン側が提示した7000億円規模の買収額は、事業の重複が少なく、独占禁止法の審査が容易で売却手続きが円滑に進むとみられる点を重視。

「東芝メディカル、キヤノンが買収 7000億円規模」,『日本経済新聞』,2016年3月9日,https://www.nikkei.com/article/DGXLASDZ09HCL_Z00C16A3000000/(閲覧日:2020年10月13日)

東芝は米ベインキャピタル主導の日米間連合に「東芝メモリ」を売却することで契約を締結したが、国際法務に詳しい柳田国際法律事務所<http://yp-law.jp/>の川島佑介弁護士は、各国の独禁法審査や合弁相手の米ウエスタンデジタル(WD)との係争といった課題が残ると指摘した。

古川有希「東芝メモリ売却:中国の独禁法審査にリスク、係争も火種-弁護士」,『Bloomberg 』,2017年10月3日,https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2017-10-03/OWV9YR6JTSE901(閲覧日:2020年10月13日)

2012年に完了したパナソニックによる三洋電機のM&Aにおいて、各国の独占禁止法審査に1年間を要したことが、買収後の業績に影響しているという、次のような指摘もあります。

三洋買収に伴う1年間の独占禁止法審査期間を含め、三洋との融合に逡巡した期間は3年間。激しい電池業界で、この空白期間は長すぎた。サムスンはこの間も増産の手を休めず、最新鋭の設備を次々に導入。パナソニックは、競争優位をみすみす逸失したといえる。

「パナソニックの大誤算、三洋買収で巨額損失」,『東洋経済オンライン』,2012年2月21日,http://toyokeizai.net/articles/-/8612?page=2(閲覧日:2020年10月14日)

このように、M&A相手の選択や推進には、独占禁止法の問題が大きく影響します。

M&Aに影響を与える独占禁止法とは、どのような法律なのでしょうか。

またM&Aを行なう際には、独占禁止法の事前審査が必要な場合があります。その事前審査は、どのような基準で行なわれ、M&Aにどのような影響を及ぼすのでしょうか。

M&A取引が増加傾向にある中、企業は今後M&A担当者を増やし、育成する必要性が高まっていくと考えられます。

また、組織全体に影響が及ぶ以上、一般の従業員のM&A、そして独占禁止法に対する基礎教育も欠かせません。

こうした知識は、自社だけでなく、一般的なビジネスの情勢を理解するためにも役立ちます。

そこで本稿では、M&Aに関連して知っておくべき独占禁止法の基礎知識と、M&A担当者を育成するための学習方法についてご紹介します。

M&Aを担当する皆さん、M&Aの法律相談や社内審査を担当する法務部門の皆さんはもちろんのこと、企業の教育担当の方や一般のビジネスパーソンの方にも参考になる内容ですので、ぜひお読みいただければと思います。

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1. 独占禁止法とは

まずは独占禁止法について概観を確認しましょう。

1-1. 日本の独占禁止法

独占禁止法は、公正で自由な競争を目指し、事業活動の基本的なルールを定めた法律です。

市場を独占しようとする行為や、事業者が共同して競争を制限する行為などを禁止しています。

独占禁止法に違反すると、違反行為を止めるように命じる排除命令や課徴金納付命令が出されたり、消費者から損害賠償請求を受けたり、株主から株主代表訴訟を起されたりするなど、企業の信用が失墜するリスクがあります。

参考)
公正取引委員会「知ってなっとく独占禁止法」,https://www.jftc.go.jp/houdou/panfu_files/dokkinpamph.pdf (閲覧日:2020年10月15日)

公正取引委員会は、この独占禁止法を運用する機関です。

「行政委員会」と呼ばれる合議制の機関で、国の行政組織上は内閣府の外局として位置づけられています。委員長と4名の委員から構成され、その傘下で約800名の職員が働いています。

参考)
公正取引委員会「企業のルールにイエローカード!~公正取引委員会の役割」,『絵で見る私たちの暮らしと独占禁止法の関わり』,http://www.jftc.go.jp/ippan/part3/about.html(閲覧日:2020年10月15日)

日本以外にも、独占禁止法のように、公正で自由な競争を目指す法律は各国で制定されており、「競争法(Competition Law)」と呼ばれています。

公正取引員会のHPには、各国の競争法の概要が紹介されています。

参考)
公正取引委員会「世界の競争法」,http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/(閲覧日:2020年10月15日)

複数の企業が、株式保有や合併などにより、一定程度、または、完全に一体化して事業活動を行なう結合関係を「企業結合」と呼びます。

独占禁止法では、企業結合により、競争が制限されたり、何らかの影響を受けているか否かを審査します。

そして、一定の取引分野における競争を実質的に制限すると判断された企業結合は、禁止されることになります。

各国の企業結合審査には、それぞれ特徴があります。主要地域である米国、欧州、中国のポイントをご紹介しましょう。

1-2. 米国の競争法

米国の競争法は、単一の法律ではなく、いくつかの法律の総称です。

主に、シャーマン法、クレイトン法、連邦取引委員会法の3つの法律とこれらの修正法から構成されています。

M&Aに関連する企業結合審査手続きは、司法省反トラスト局と連邦取引委員会(FTC: Federal Trade Commission)の双方に届出が必要です。

届出が受理されると両当局間でどちらの当局が担当するか協議して決定されます。

合併審査手続フローチャートは、以下の資料を参考にしてください。

参考)
公正取引委員会「合併審査手続フローチャート」,https://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/u/america_files/usmerger.pdf(閲覧日:2020年10月15日)
公正取引委員会「米国競争法」,http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/u/america.html(閲覧日:2020年10月15日)

1-3. EUの競争法

欧州では、事前届出の基準に違反した場合、巨額のペナルティが課されることがあります。

企業結合の事例ではありませんが、EU競争法の違反として、EU委員会がGoogleに約3000億円もの制裁金を課すと発表したことが話題になりました。

参考)
濵田理央「EUがGoogleに制裁金3000億円 独占禁止法違反で過去最高額」,『HUFFPOST』,2017年6月27日,http://www.huffingtonpost.jp/2017/06/27/google_n_17304298.html(閲覧日:2020年10月15日)

EU競争法では、合併等企業結合における届出義務の違反に対して、次のような制裁基準が規定されています。

欧州委員会は、当事者が届出に当たり、故意又は過失により不正確又は虚偽の資料を提供した場合等には、当事者の年間総売上高の1%以下の制裁金を課すことができる。また、欧州委員会は、当事者が故意又は過失により届出を怠った場合、又は欧州委員会の決定に反する企業結合を実施した場合等は、当事者の年間売上高の10%以下の制裁金を課すことができる。(企業結合規則14条)

公正取引員会「EU(European Union) 4.合併等企業結合 ウ 違反行為に対する措置 (イ)制裁金」,http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/e/eu.html(閲覧日:2020年10月15日)

制裁金は企業の年間売上高に対して課されるため、グローバルに事業活動をしている大企業では、予想外の巨額な制裁金になることがあるので、届け出の際には慎重さが欠かせません。

1-4. 中国の独占禁止法

中国では、審査期間と結論の予測が困難なので、注意が必要です。

例えば前述の東芝メモリの件で、国際企業法務に詳しい芝綜合法律事務所の牧野和夫弁護士は、中国の独占禁止法審査について、次のようにコメントしています。

中国での独禁法審査は初期審査(30日)に続いて本審査(90日)を実施。延長可能な期間を含めると最長で約180日かかるのが通例で、さらに伸びたケースもある。牧野弁護士は、『中国では自国の産業保護を考慮した政策的判断が影響して、結論がどう出るかは読みづらい』と話す

柳原一哉「【東芝危機】メモリ売却実現でも独禁法の壁 中国の審査 長期化の恐れ」,『産経ニュース』,2017年8月31日,http://www.sankei.com/economy/news/170831/ecn1708310035-n1.html(閲覧日:2020年10月15日)

参考)
坂本幸雄「東芝を待ち受ける超難関の「中国独禁法審査」」,『WEDGE Infinity』,http://wedge.ismedia.jp/articles/print/10888(閲覧日:2020年10月15日)
公正取引委員会「中国独占禁止法」,http://www.jftc.go.jp/kokusai/worldcom/kakkoku/abc/allabc/c/china2.html(閲覧日:2020年10月15日)

独占禁止法の審査は各国単位で、それぞれの法律に基づき行われるため、どのぐらいの期間がかかるかを予想するのは非常に難しいのが実情です。

パナソニックと三洋電機は、ともにグローバルに事業展開しており、さらに、競合する事業が多い企業同士のM&Aでした。そのため、各国の独占禁止法審査に時間がかかったと思われます。

M&Aを実施する場合は、企画段階において、独占禁止法の審査期間と進め方についてもよく検討しておく必要があります。

2. M&Aと独占禁止法審査

それでは、M&Aにおいてはどのような基準で独占禁止法の審査が行われるのでしょうか。日本の事例をご紹介します。

2-1. 事前届出の義務

200億円超の会社が50億円超の会社を吸収合併する場合など、売買規模の大きさにより、公正取引委員会に事前届出を行う必要があります。

届出が受理された後、30日を経過するまでは、取引が実行できないので、注意してください。

なお具体的な基準は、公正取引委員会から発表されている「企業結合に関する独占禁止法の運用指針」(「企業結合ガイドライン」)をご参照ください。

2-2. 審査対象の判断

最初に、企業結合審査の対象となるか否かが判断されます。

株式保有、役員の兼任、合併、分割などの類型ごとに検討されます。

企業結合審査の基本的な考え方は、次のような内容です。

・企業結合(株式保有、役員兼任、合併、分割、共同株式移転、事業譲受け等 ※事業活動が不可逆的に一体化)のうち、一定の要件(国内売上高の額等)に合致するもの。
 ・企業結合により、一定の取引分野における競争を実質的に制限することとなる場合、企業結合の 
禁止 ※ただし、独占禁止法の問題を解消する措置が採られる場合には容認。

公正取引委員会「企業結合審査の考え方について(参考資料)平成29年12月6日事務総長定例記者会見配布資料」,p1,https://www.jftc.go.jp/houdou/teirei/h29/oct_dec/kaikenkiroku171206_files/171206_s.pdf(閲覧日:2020年10月15日)

前述のキヤノンによる東芝メディカルシステムズのM&Aについては、事前届出について、日本の公正取引委員会から、異例の注意を受けています。

さらに、欧州委員会からも警告を受けています。

これらの警告は、いずれも、事前届出のルールの順守に対する内容です。事前届出は法律で定められたルールを守る必要があります。

参考)
金田 繁弁護士「公取による異例の注意 キヤノンによる東芝メディカルシステムズの株式取得は一体何が問題だったのか?」,『BUSINESS LAWYERS』,2016年8月18日,https://business.bengo4.com/category8/article64(閲覧日:2020年10月15日)
「欧州委、キヤノンに警告 東芝メディカルの買収で」,『産経ニュース』,2017年7月7日,http://www.sankei.com/economy/news/170707/ecn1707070023-n1.html(閲覧日:2020年10月15日)

2-3. 審査基準のポイント

日本の場合、審査対象となった場合、次のような要素から総合的に判断されます。

  • 商品の範囲、地理的範囲などに需要者からみて代替性があるか
  • 競争を実質的に制限するとは考えられない水準(セーフハーバー)の指標に該当するか否か
  • 競争を実質的に制限していないか否か
  • 実質的に制限している場合、問題を解消する措置をしているか否か など

詳細は、「企業結合審査のフローチャート」(「企業結合ガイドラインP39」)をご参照ください。

Q&Aや主な企業結合事例も公開されていますので、併せてご参照ください。

参考)
公正取引委員会「「企業結合ガイドライン」改正に関するQ&A」,http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/guideline/guideline/kaisei/kigyo-qa.html(閲覧日:2020年10月15日)
公正取引委員会「主な企業結合事例」,http://www.jftc.go.jp/dk/kiketsu/jirei/index.html(閲覧日:2020年10月15日)

3. 他社事例のケーススタディー

交渉においては事前準備が重要です。

M&Aの場合、相手との交渉準備と並行して、独占禁止法の審査に該当するか否かを検討して、事前に準備しておく必要があります。

公正取引委員会が公開している事例を用いて、他社事例のケーススタディーによるM&A担当者の人材育成方法をご紹介します。

(1) 基礎知識の学習
最初に、独占禁止法の基礎知識を学習します。

公正取引委員会のサイトには、いろいろな基礎知識を学習するためのマニュアルが公開されています。

独占禁止法のeラーニングを活用すれば、学習の進捗や学習内容の理解度を確認することができます。

参考)
公正取引委員会「各種パンフレット」,http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.html(閲覧日:2020年10月15日)

(2) 他社事例のケーススタディー
コンプライアンス問題を防ぐためには、事例から学ぶ学習方法が有効です。

特に、独占禁止法は、具体的な事例から考えないと判断が難しい法律であり、事例から学ぶ方法の有効性が高い法分野でもあります。

具体的な事例から、どのような場合がOKであり、どのような場合がNGであるかを学び、そのプロセスを通じて、企業結合審査に対する判断基準を理解します。

コンプライアンスに事例学習が効く!意識を底上げする取り組みを解説

例えば、前述のキヤノンと東芝メディカルの件について、ご紹介した「主な企業結合事例」(事例10、P83-91、公正取引委員会)に詳しく紹介されています。

この中で、事例の概要から、本件が競争に与える影響をどのような考え方で審査し、最終的に競争を実質的に制限することにはならないと判断したかを学ぶことができます。

このような事例を用いた具体的な学習方法をご紹介します。

Step 1:事実関係のマップ化
複数メンバーのグループ(1グループ5名程度が適数)で、事例10について、「主な企業結合事例」に掲載されている情報を読み、当事者と相関関係をマップ化します。

マップ化は、交渉の事前準備に用いられる効果的な方法ですが、事例を理解するためにも有効です。

次のマップは、大企業とベンチャー企業が事業提携を目指して契約交渉するシーンの全体像をマップ化したサンプルです。

事例10についても、このようなマップを作成し、事例に記載されている商品や数値などを記載することにより、全体像を俯瞰することができます。

図表)事業提携に向けた契約交渉マップ(サンプル)

※一色正彦・竹下洋史『法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー(改訂版民法改正対応)』,第一法規,2020, p.261. 図13:本ケースの交渉シーンを元に編集部で作成

Step 2:論点の議論
次に、論点を決めて議論します。

例えば、公正取引委員会による「平成28年度における主要な企業結合事例」の事例10では、「第3 本件行為が競争に与える影響」において、水平的企業結合と垂直型企業結合に分けて、競争制限に該当するか否かを検討した内容が記載されています。

この内容について、①どのような基準で判断されているか、②判断が変わり得る異なる条件は何か、という視点で、グループメンバーと論点を議論します。

この議論は、結論を出すことが目的ではなく、多面的な可能性を検討し、企業結合審査の基準を理解するための議論です。

Step 3:論点の整理
最後に、この事例から得られた教訓を整理します。

自社に過去、類似した事例がないかをレビューし、同様の整理をすることにより、これから検討しているM&Aに活かせる可能性がないかなどを考えます。

学習した内容に基づき、自社の事例に展開するために何を得たかを議論して整理することが重要です。

また、弁護士など独占禁止法の専門家に参加してもらい、疑問に思ったことを質問したり、自社の事例に活かすための教訓について、コメントをもらったり方法も有効です。

今後、日本のM&Aは増えることが予測されており、企業は、M&A担当者を増やし、育成する必要性が高くなります。

この教育方法は、独占禁止法の基礎知識を通じて、何が問題となるのか、なぜ問題となるのかの判断基準を学べます。

さらに、自社がM&Aを推進する場合の課題や注意すべき事項を事前に認識し、シミュレーションできます。

学習方法については、eラーニングと集合研修を組み合せたハイブリッド研修をご紹介しました。

https://research.lightworks.co.jp/educational-programs-new-employees

企業結合のような実務知識の学習においても、基礎知識をeラーニングで学習し、その後、具体的な事例を議論するケーススタディーによる学習が有効です。

「独占禁止法」をeラーニングで社員教育

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この記事にあるように、独占禁止法に違反すると、会社の信用が失墜しブランドそのものに計り知れない損害を与えてしまいます。コンプライアンス経営を実現するためには、独禁法リスクを正しく理解することが不可欠です。
本教材では、ビジネスで必要となる独占禁止法の基本的な考え方や概念を学習し、ケーススタディでわかりやすく実務的な知識を身につけることができます。

本教材をeラーニングとして配信することで、効率的に「独占禁止法」の社員教育をすることが可能です。

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4. まとめ

独占禁止法は、公正で自由な競争を目指し、事業活動の基本的なルールを定めた法律です。

独占禁止法に違反すると、違反行為を止めるように命じる排除命令や課徴金納付命令が出されたり、消費者から損害賠償請求を受けたり、株主から株主代表訴訟を起されたりするなど、企業の信用が失墜するリスクがあります。

独占禁止法の企業結合審査は、M&Aなどの企業間の取引において、実質的に競争を排除しているか否かを審査するものです。

日本では、対象となる取引を行う企業は独占禁止法の運用機関である公正取引委員会から事前に審査を受ける必要があります。

事前審査の対象取引の場合は、審査が完了するまで、取引を開始することができません。

グローバルに事業を展開する企業同士の場合は、日本以外にも、事業を行っている各国の審査を個別に受ける必要があります。

事業領域が重なっている場合は、審査の難易度が高くなります。

M&Aを企画、推進する場合には、企業結合審査の対象となるか否かの確認がまず必要です。

対象となる場合は、事前審査の準備をするとともに、審査に要する期間を想定したM&Aの推進が必要です。

これから増えると思われるM&Aを円滑に推進するためには、公正取引委員会が公開している事例などを用いて、M&Aや法務担当者が、独占禁止法の基礎知識を学習するとともに、他社事例のケーススタディーを行う方法がお勧めです。

今回ご紹介した情報やケーススタディーの方法を、M&Aを推進するための人材育成や教育に、ご活用ください。

Written by

一色 正彦

金沢工業大学(KIT)大学院客員教授(イノベーションマネジメント研究科)
株式会社LeapOne取締役 (共同創設者)
合同会社IT教育研究所役員(共同創設者)

パナソニック株式会社海外事業部門(マーケティング主任)、法務部門(コンプライアンス担当参事)、教育事業部門(コンサルティング部長)を経て独立。部品・デバイス事業部門の国内外拠点のコンプライアンス体制と教育制度、全社コンプライアンス課題の分析と教育制度を設計。そのナレッジを活用したeラーニング教材の開発・運営と社内・社外への提供を企画し、実現。現在は、大学で教育・研究(交渉学、経営法学、知財戦略論)を行うと共に、企業へのアドバイス(コンプライアンス・リスクマネジメント体制、人材育成・教育制度、提携・知財・交渉戦略等)とベンチャー企業の育成・支援を行なっている 。
東京大学大学院非常勤講師(工学系研究科)、慶應義塾大学大学院非常勤講師(ビジネススクール )、日本工業大学(NIT)大学院 客員教授(技術経営研究科)
主な著作に「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー(改訂版民法改正対応)、「第2章 法務部門の役割と交渉 4.契約担当者の育成」において、ブレンディッド・ラーニングの事例を紹介」(共著、第一法規)、「リーガルテック・AIの実務」(共著、商事法務:第2章「 リーガルテック・AIの開発の現状 V.LMS(Learning Management System)を活用したコンプライアンス業務」において、㈱ライトワークスのLMSを紹介 )、「ビジュアル 解説交渉学入門」、「日経文庫 知財マネジメント入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「MOTテキスト・シリーズ 知的財産と技術経営」(共著、丸善)、「新・特許戦略ハンドブック」(共著、商事法務)などがある。

執筆者プロフィール

まるでゲームを攻略するように
コンプライアンス教育に
取り組めるよう、
無料のeBookを作りました。

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