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討議の必要なコンプライアンス研修をオンラインで実施する方法

2022.1.5 更新

「eラーニングだけでは済ませられないコンプライアンス研修がある。オンラインで可能だろうか?」

新型コロナウイルスの影響で研修のオンライン化が進んでいますが、Web会議システム自体初体験でお困りの講師の方・運営担当の方は多いのではないでしょうか。

ことコンプライアンスのような必須の研修、特に上級の講座については、eラーニングによる自己学習だけでは済ませられないのが実情です。

さらに、同じ集合研修でも、講義型とグループワークを行う体験型を比較すると、グループワークの方が、オンライン化が難しいと考えられています。道具や実技が必要な店舗での研修などは、オンライン研修には不向きな学習内容です。また、グループワークを行うには、オンライン研修に合わせた事前の準備が必要であり、集合研修とは異なる注意事項があります。

一方、導入が加速しているWeb会議システムには多様なグループワーク機能があり、これらの機能を有効に活用すれば、コンプライアンス教育でも効果的なグループワークをオンライン研修で行うことは可能です。ツールの向上性の速さには、驚かされるばかりです。

今回は、コンプライアンス教育について、Web会議システムのグループワーク機能を用いた効果的な研修方法を、特に研修を実施する側の目線から取り上げます。

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1. オンライン研修の現状と課題

これまで効果的な教育方法として、基礎知識をeラーニングで学び、社内SNSなどによるネット議論を通じたオンラインのグループワークを経て、最後に集合研修でディスカッションや実践的なシミュレーションを行うブレンディッド・ラーニングの事例をご紹介してきました。

ブレンディッド・ラーニングは、個別に行うeラーニングと集合研修の特徴を活かしながら、それぞれの課題を補完し、相乗効果を期待できるため、コンプライアンス教育でもお勧めの学習方法です。

コロナ禍の影響により通常の授業ができず、2020年4月から積極的にオンライン授業を取り入れている日本の大学教育について、同年6月5日、おそらく日本初の「革命」的な教育シンポジウムが、まさに「オンライン」で開催されました。

その中で、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)で実施されているライブ授業を中心としたオンライン授業の様子と、授業開始後すぐの5月に実施した学生と教員向けのアンケート結果が発表されました。

1-1. 大学教育の事例

そのシンポジウムによると、オンライン授業には教員より学生の方が好意的であり、チャットを使うことで普段よりコミュニケーションが活発になったという肯定的な意見がありました。

一方、オンライン授業に向いている授業と不向きの授業がある、学生の通信環境の不安などの課題も指摘されています。それでも、教員の約半数、学生の約7割が、平常時のオンライン授業の継続を希望しています。

この結果は、テレワークやリモートワークによる在宅勤務を経験した企業の社員の多くが継続を希望しているのと同じ傾向を示しています。また、すべての業務が在宅勤務向きではないこと、各個人の通信環境に不安があることなどの状況とも類似しています。

企業研修をオンラインで行う場合にも課題はありますが、在宅勤務を原則とする企業や、在宅勤務と出社を併用する企業も出てきており、今後は、企業研修の分野でも、オンラインの活用が増えてくると思われます。

なかでもコンプライアンス分野は、実際のビジネスシーンに当てはめると判断に迷う微妙なケースもあります。そのため、グループワークで議論しながら、理解を深める研修方法が有効です。従って、コンプライアンス教育では、講義収録やライブ配信による講義型のオンライン研修に加え、グループワークによる体験型においても、効果的なオンライン研修の方法を検討しておく必要があります。

参考)「慶應SFCにおける遠隔授業とアンケート調査結果」、4月からの大学等遠隔授業に関する取組状況共有サイバーシンポジウム(6/5オンライン開催)、国立情報学研究所
https://www.nii.ac.jp/event/upload/20200605-5_Uehara.pdf

1-2. グループワークの注意事項

オンライン研修によるグループワークには、集合研修の場合と異なる注意点があります。そのため、まず次のような対応が必要です。

・ 円滑なコミュニケーションのために「事前にルールを決めておく」
・ 円滑な進行とストレス対策のために「音声についての問題を軽減する」
・ 接続不良のバックアップのために「通信トラブルに備える」
・ 「オンライン研修の長期化による問題の対策」を行い集中力を維持する

※オンライン研修でグループワークを実施する際の注意点について、詳細は以下の記事をご参照ください。

グループワークは、能動的な学習方法であるアクティブ・ラーニングとしても、高い学習効果が期待できます。一方、オンライン研修によるグループワークを企画する場合は、オンラインならではの課題を考慮し、講義型と比較して、体験型のグループワークに対応した事前準備ときめ細やかな講師の対応が必要になります。

大学のオンライン授業で積極的にグループワークに取り組むとともに、情報発信している田上正範氏(追手門学院大学准教授)は、企業研修の経験も踏まえて、オンライン授業によるグループワークについて、次のように述べています。

オンラインで効果的なグループワークを行うには、講師、受講生とも、使用するシステムの機能に「慣れる」必要があります。企業研修と異なり、大学講座は、同じ学生に一つの科目で複数回の授業を行うため、最初の段階では、学習理解の是非よりもシステムに「慣れる」時間を確保するためのワークを入れるようにしています。システムに慣れてくると自ら使い方を工夫しながら、活発な議論を始めるようになります。画面に集中するため、対面形式の授業の時以上に、議論が深まります。また、対面形式ではコミュニケ―ションに苦手意識をもつ学生が、積極的に議論する場合もあります。同じ効果は、企業研修でも期待できると思います。さらに、録画機能を使えば各グループの議論を記録することができるため、講師にとっては、授業の振り返りや今後の教材開発のコンテンツとして活用できます。

オンラインによるグループワークで学び合い~リーダーシップ入門(追手門学院大学)https://youtu.be/aUARgkw6qxg

このように、オンライン研修では、講師と受講生がともにグループワーク機能に慣れる必要があります。そのうえで機能を有効に活用できるようになると、高い学習効果が期待できます。

2. コンプライアンスのオンライン研修

それでは、コンプライアンス教育において、オンラインで効果的なグループワークを行うための注意点と対応方法をご紹介しましょう。

2-1. オンラインに合わせたプログラムを行うこと

オンラインでは、講師、受講生ともに使用するシステムに慣れる必要があります。

特に、グループワークでは、受講生のシステムの習熟度に差があると本来の目的である議論が不十分になりやすく、各受講生がストレスを感じる原因にもなります。

同じ内容を集合研修で実施する場合よりもプログラムの進行を丁寧に説明するとともに、時間の配分に余裕を持つようにするとよいでしょう。

大学講座と異なり、企業研修では、同じ受講者に対して、複数回のプログラムを行うことが少ないと思います。ですから、研修の最初に、グループワーク機能に慣れるための短い演習を行うことによって受講者に機能を理解させるとともに、講師が受講者のシステムに対する習熟度を確認する方法がお勧めです。

コンプライアンス教育について、集合研修のグループワーク事例としてご紹介した「業務フローに合わせたチェックリスト作成演習」(下請法)、「業務フローに合わせた事例問題の演習」(外為法)、「Q&A作成演習」(PL法、著作権法)は、グループで議論して共通の書類を作成し、それを発表しながら議論するシミュレーションタイプのプログラムです。これらのプログラムは、オンラインでも、ホワイトボード機能などをうまく使えば、同様の方法で行うことは可能です。

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しかし、受講者によりシステムの習熟度にバラツキがある場合は、講師が共通画面で基本的な課題を出し、最初は、各グループが口頭で議論し、その結果を講師が論点を整理する方法によるプログラムから始めた方が、円滑に進行できます。

ブレンディッド・ラーニングとは 研修とeラーニングのうまい組合せ方

参考)ホワイトボードの共有 (ZOOM + a)https://zoom.les.cmc.osaka-u.ac.jp/これができると便利/ホワイトボードの共有/

たとえば、全社員に必要なコンプライアンスの重点教育分野であるパワハラ防止法について、次のようなオンラインによるグループワークの進め方があります。

パワハラ防止法のグループワークの例

<事前学習>
パワハラ防止法の基礎と厚生労働省が公表しているパワハラの判断基準(優越的な関係に基づいて行われることなど)について、事前に各自がeラーニングなどで学習する。

<課 題>
パワハラの6類型12事例から1類型2つの事例(パワハラの該当事例と非該当事例)を課題として提示する。そのうえで、それぞれの事例について、疑問点は何か、自分、もしくは自分の職場でも似た経験があるか、何が問題だと思うか、どうすればよいかなど、講師が議論すべきテーマを指示し、グループ単位で議論する。

※例:過小な要求[1]
× 上司が管理職である部下を退職させるため、誰でも遂行可能な受付業務を行わせる
〇 経営上の理由により、一時的に、能力に見合わない簡易な業務に就かせる

<進め方>
最初の1類型2事例は、グループ内で議論し、その後、各グループの代表者がその議論の内容を口頭で発表し、講師が各グループの発表を比較しながら、各事例の背景にある本質の課題を引き出すなど、論点を整理したうえで、ポイントを解説する方法から始める。

その後、講師がグループワークの進行状況を見ながら、徐々にホワイトボード機能などを使い、グループ内で議論した内容を書き出したり、重要なポイントを整理する方法の演習を行ったりする。そして最後は、研修のまとめの課題をグループ単位でホワイトボード機能などにまとめ、その資料を用いて、各グループの代表者が発表し、その発表内容を講師が総括する。

図)グループワークの進め方

事前に、基礎知識をeラーニングなどで学び、具体的な事例を素材に課題を決めて議論を中心に行う方法は、通常のブレンディッド・ラーニングと同じです。集合研修のグループワークでは、議論した内容をグループで書類にまとめて発表する方法がよく行われます。これは、オンライン研修でも可能ですが、グループワーク機能に慣れるまでは、議論に集中する方法がお勧めです。

この方法は、ホワイドボード機能などを用いて、論点を書き出しながら議論したり、議論の内容をまとめて発表したりする方法に移行することにより、オンライン研修を円滑に進めながら、学習効果を確保することを目指しています。

なお、オンライン研修は、集合研修と比較して、長時間になると受講者がストレスを感じることがあります。そのため、研修中には集合研修の場合より、少し長めに休憩時間を取るとよいでしょう。

また、テレワークやリモートワークを継続する場合の職場の課題として、雑談が十分に行われていないことが挙げられています。職場の円滑なコミュニケーションや新しいアイデアは、雑談から生まれることも多いからです。

オンライン研修で、チャット機能などを使い雑談することは可能ですが、モニター画面を通したコミュニケーションだけでは、お互いの表情や目線、距離などの非言語メッセージから雑談のタイミングや相手の反応を図るのが難しいと思います。

そのため、研修にメリハリをつけ、オンライン研修が長期化するストレス対策として、すべてをオンライン研修にするよりも、一定の比率で集合研修を組み合わせる方法がより効果的です。

特に、コンプライアンス教育のテーマには、パワハラ防止法のように微妙な判断が必要なテーマや、職場の状況など話しにくいテーマがあったりします。このような要素を含む集合研修では、テーマを切り替えるタイミングで長めに休憩を取って談話を促し、最初は、雑談風に経験談を話すように仕向けるなど、カジュアルな会話から議論させるといいでしょう。

このように、企業のコンプライアンス研修においては、全てのプログラムをオンラインだけで行うよりも、一定の比率で集合研修を組み合わせる方が、高い学習効果が期待できます。

参考)
リモートワークにおける雑談の重要性。様々な可能性は雑談から生まれる。(note)
https://note.com/kengomori/n/nd374fc3bc103

ブレンディッド・ラーニングとは 研修とeラーニングのうまい組合せ方

2-2. オンラインに合わせた教育資料を準備する

集合研修では、受講者はスクリーンやモニターに投影された講義資料に加え、手元に配布されたコピーを見ながら講義を受ける方法で受講することが多いと思います。

しかし、オンライン研修の場合、受講者側にプリンターによる印刷環境がないと手元のモニター画面のみになります。印刷物であれば、ページを繰りながら見直したり、全体を一覧したりすることができます。しかし、モニター画面のみで視聴する場合、印刷物と比較して、受講者が見られる情報に制約があります。

そのため、オンライン研修の教育資料は、集合研修の場合以上に、論点やポイントを明確に表示した方がわかりやすいでしょう。詳しい情報を提供する必要がある場合、追加資料として、別途、メールで送付したり、社内のサイトからダウンロードさせたりするなどの方法でフォローできます。

具体的な事例を用いたコンプライアンス講義資料の作り方について、事例の相関関係図を表示する方法や、学習のポイントやキーワードを例示する方法を独占禁止法研修に関する記事でご紹介しました。

M&A担当者を育てる方法とは 独占禁止法の基礎知識と事例学習がカギ

オンライン研修では、下記のサンプル図1(相関関係図で事例の関係性を示す)やサンプル図2(キーワードでポイントを明示する)タイプのような講義資料の方が、受講者は理解しやすいと思います。特に、各ページのヘッダーに学習のポイントとなるキーラインメッセージを明示する方法は、各ページの論点やメッセージが伝わりやすく、効果的です。

サンプル図1【事例】情報管理の甘さから起きた顧客とのトラブル!

サンプル図2【解説】秘密保持は、何のための契約か?

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2-3. グループワーク機能の特徴を活かす

最近オンライン会議用のソフトとしてよく利用されているZoomのブレイクアウトルーム機能を例に、グループワーク機能の特徴を活かした研修方法をご紹介します。

(1) チャット機能によるコミュニケーション 
講師と受講者のコミュニケーションは、グループワークを行う時間帯での対応が重要です。講師が各グループを訪問してファシリテーションすることもできますが、それ以外は、チャット機能を使ってやり取りすることになります。

チャット機能では、全員に対するメッセージと各受講生に対するメッセージが使用できます。全員に対するメッセージは、講師が進行の予告やグループ演習の注意事項などを連絡するために有効です。また各受講者に対するメッセージは、受講者の個別質問に回答したり、音声・通信環境の悪化による接続不良などがあった場合の対応等に活用できます。

このように、チャット機能を活用することにより、グループワークの進行管理や受講者とのコミュニケーションを円滑に行うことが可能になります。また、グループワークでは、議論が盛り上がり、設定された時間を忘れてしまうことがあります。そこで、グループワークの時間が終了する数分前に、講師からチャット機能を用いて「終了○分前」、「残り○分で議論の方向性を整理するように」といったリマインドメッセージを送るとよいでしょう。

グループワークを終了する際は、講師が各グループの設定を解除します。この操作をすると、受講者の画面が一斉に元の共通画面に戻ります。そのため、事前に予告しておく方がグループワークとその後の進行が円滑に進みます。

ただし、オンライン研修で使用するチャット機能は、SNSのようなインタラクティブな使い方においては限界があります。講師が複数の受講者から同時にメッセージを受領し、回答しながら講義を続けるのは実務的には困難です。そのためにも、チャット機能は、講師と受講生の間で連絡メッセージを送るためのツールと考えて使用するとよいでしょう。

また、日常生活で雑談に加わるタイミングがつかみにくいのと同様、オンラインでも受講者が質問や発言するタイミングをつかむのは難しいものです。講師は会話に加わるのが苦手な人もいることを配慮し、質問や発言の順番が決まっている場合は、チャット機能を使って「○○さんが加わりますよ」という旨を事前に会話中のグループに連絡しておくとよいでしょう。

また、共通画面での質問や発言は、集合研修で手を挙げる場合と同様に、質問や発言をしたい受講者がチャット機能で講師にメッセージを送り、講師がその中から、タイミングを指示する方法で行うと円滑に進行できます。

このように、チャット機能は、事前に運営ルールを決めておくことで有効に活用できます。

(2) チームティーチングによるオペレーション
オンライン研修の講師は、導入の講義、グループワークの課題提示、進行方法の説明に加え、受講生のグループ分け、進行のフォローに加えて、受講者の音声・通信環境のトラブル対応まで行わなければなりません。そのため、各セッションの時間配分は、集合研修の場合と比較して、余裕を持って設定しておく必要があります。

それでも、すべてのオペレーションを講師が一人で行うことは負担が大きく、進行中にオペレーションエラーが起こりやすくなります。特定の受講者にトラブルが発生して対応している間、ほかの受講者はそのまま待つことになってしまいます。頻繁にトラブルが起こると、研修の進行だけでなく、ほかの受講者のストレスにもなり、学習効果に影響します。

こうしたトラブルを考慮するならば、複数の講師と進行を役割分担したり、グループ分け、進行のフォローや各グループのファシリテーションなどのTA(ティーチングアシスタント)を設定したりしておきましょう。

協力者に頼んで研修を行うオペレーションを導入するのがお勧めです。チームティーチングで役割分担すれば、進行をスムーズにするうえに、特定の受講者に音声・通信環境などのトラブルが発生しても、ほかの受講者に影響を与えずに対応できます。Zoomには「共同ホスト」という機能があり、共同講師やTAはこれを使えば自由に各グループの議論に参加し、議論をファシリテーションすることができます。

なお、講師のPCは、受講者の人数とグループの数にもよりますが、大きめのモニターを使い、さらに複数のPCでリアルタイムにオンライン研修をバックアップしておくとよいでしょう。そうすれば、音声・通信環境の問題で講師側のPCに接続不良などが起こった場合にも、グループワークを止めることなくオペレーションできます。

さらにはグループ数に合わせたバックアップPCが準備できれば、各グループに共同講師、もしくはTAがファシリテーターとして入り、集合研修のように、各グループの議論の模様を講師が同時並行で見ながら、全体のプログラムを進めることができます。

また、各グループの議論を録画しておけば、研修後に、どのような議論が行われたかを振り返り、今後のプログラム開発の材料にすることもできます。

(3) 自動割り振り機能によるリフレクション
Zoomのブレイクアウト機能には、「自動割り振り」と「手動割り振り」という2つのグループ分け方法があります。

グループワークの議論を活性化するためには、1グループを5名程度とし、学習目標と学習対象によって編成を決める方法が効果的です。そのため、最初は、集合研修の場合と同様に、受講者の所属や職種などのバックグラウンドに基づき、講師がグループのメンバーを決めて、手動割り振り機能を使いグループ分けするのがよいでしょう。

一方、各グループの発表や講師による全体フィードバックの後、議論したテーマについて、各自の感想や学んだことを最後の振り返る(リフレクション)には、自動振り分け機能を用いて行う方法が効果的です。

集合研修の場合、ランダムに組み合わせを変えたグループでリフレクションを行うためには、物理的な受講者の移動時間と一定のスペースが必要になります。しかし、オンライン研修では、短時間で何度もランダムなグループ組み換えが可能です。この機能を活かして、時間を決めて複数回、異なる受講者でリフレクションを繰り返し行うことにより、多様なメンバーによる議論が可能になるので、学習効果を高めることができます。

このように、グループワーク機能を有効活用すれば、オンライン研修でも効果的なコンプライアンス教育を行うことができます。

参考)
ブレイクアウトルーム入門(Zoom ヘルプセンター)
https://support.zoom.us/hc/ja/articles/206476093?mobile_site=true
ミーティングの参加者の管理 (Zoom ヘルプセンター)
https://support.zoom.us/hc/ja/articles/115005759423-Managing-participants-in-a-meeting?mobile_site=true

[1] 原典)パワーハラスメントの定義について、P2-3「職場のパワーハラスメントの概念と職場のパワーハラスメントに当たりうる6類型との関係性」(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/content/11909500/000366276.pdf

3. まとめ

日本の大学では、2020年4月以降、積極的にオンライン授業が行われています。オンライン授業には向いている授業と不向きの授業がある、学生の通信環境が不安などの課題もありますが、教員の約半数、学生の約7割が、平常時のオンライン授業の継続を希望しているという慶應義塾大学SFCの例があります。

この事例は、テレワークやリモートワークによる在宅勤務を経験した社員が持つ課題や意識と似ており、今後は、オンラインによる企業研修が増えると思われます。

ただし、講義型と比較して、体験型のグループワークはオンライン化が難しいと考えられています。しかし、Web会議システムの多様なグループワーク機能を活用すれば、効果的なグループワークをオンラインで行うことは可能です。

コンプライアンス教育について、オンラインで効果的なグループワークを行う方法として、次の3つのポイントをご紹介しました。
(1) オンラインに合わせたプログラム行うこと
(2) オンラインに合わせた教育資料を準備すること
(3) グループワーク機能の特徴を活かすこと

今回ご紹介したグループワークによるコンプライアンスのオンライン研修方法を参考に、自社の適切なコンプライアンス教育の実現に取り組んでください。

Written by

一色 正彦

金沢工業大学(KIT)大学院客員教授(イノベーションマネジメント研究科)
株式会社LeapOne取締役 (共同創設者)
合同会社IT教育研究所役員(共同創設者)

パナソニック株式会社海外事業部門(マーケティング主任)、法務部門(コンプライアンス担当参事)、教育事業部門(コンサルティング部長)を経て独立。部品・デバイス事業部門の国内外拠点のコンプライアンス体制と教育制度、全社コンプライアンス課題の分析と教育制度を設計。そのナレッジを活用したeラーニング教材の開発・運営と社内・社外への提供を企画し、実現。現在は、大学で教育・研究(交渉学、経営法学、知財戦略論)を行うと共に、企業へのアドバイス(コンプライアンス・リスクマネジメント体制、人材育成・教育制度、提携・知財・交渉戦略等)とベンチャー企業の育成・支援を行なっている 。
東京大学大学院非常勤講師(工学系研究科)、慶應義塾大学大学院非常勤講師(ビジネススクール )
主な著作に「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー(改訂版民法改正対応)、「第2章 法務部門の役割と交渉 4.契約担当者の育成」において、ブレンディッド・ラーニングの事例を紹介」(共著、第一法規)、「リーガルテック・AIの実務」(共著、商事法務:第2章「 リーガルテック・AIの開発の現状 V.LMS(Learning Management System)を活用したコンプライアンス業務」において、㈱ライトワークスのLMSを紹介 )、「ビジュアル 解説交渉学入門」、「日経文庫 知財マネジメント入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「MOTテキスト・シリーズ 知的財産と技術経営」(共著、丸善)、「新・特許戦略ハンドブック」(共著、商事法務)などがある 。

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