コンプライアンスを 教える

著作権教育が明暗を分ける!うかつなコピペによる大損害に注意

2022.1.5 更新

「コピペしてもバレないだろう」
「これは引用だから問題ないよ」
こうした勝手な判断が、大きな問題へつながるケースが近年は急増しています。

以下の記事で、映画館の上映前やTVのCMなどで行われている「NO MORE 映画泥棒!」というキャンペーンの背景には、著作権侵害の罰則強化(最高刑は、窃盗罪と同じ懲役10年以下)であることをご紹介しました。

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著作権侵害は、法人に対して3億円以下の罰金刑に加えて、著作権者から侵害の差し止め、損害賠償や名誉回復措置などを請求されるリスクがあります。

かつて、DeNAのキュレーションメディア(まとめサイト)では、74万件もの画像を使用して著作権侵害の疑いがあることが話題になり、DeNAは、この問題で38億円の損失を計上しました。

また、芥川賞候補となった小説「美しい顔」に対しては、盗用疑惑が報道されました。候補作品が別のノンフィクション作品と10カ所以上も類似箇所があり、著作権の侵害が問われたのです。
最終的には、法的な問題には至らないと選考委員会が見解を示しています。

しかしこの事例は、作家や出版社という著作物を扱い、著作権をよく知る専門家の間でも微妙な判断が問われるほど、著作権侵害の判断は難しいことを表しています。

さらに著名な企業の場合は侵害の疑いの段階でも、大きく報道されるリスクがあることを示しています。

したがって、著作権コンプライアンスには、著作権の基礎知識を理解するとともに、他人の著作権を尊重する意義を学ぶ必要があります。

今回は、以下の記事でご紹介した法令遵守+CSR(企業の社会的責任)・リスクマネジメントを踏まえて、著作権法の教育を企画する際に、押さえておくべきポイントと研修方法の事例をご紹介します。

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1. 著作権コンプライアンスの教育ポイント

冒頭の例にも挙げたように、専門家でも著作権侵害に関する判断は微妙に分かれてしまうものです。

特に、最近インターネット上での著作権侵害事例が増えており、海外でも著名な通信事業者や検索事業者が、多額のコストを掛けて侵害対策に取り組んでいます。

また、日本でもインターネットの著作権侵害については、弁護士に多くの相談が寄せられています。

社員全員が、著作権に関してある程度の知識をつけておかなければ、これからのビジネスに対応しにくくなるでしょう。そこで基礎的な社員教育をしておくことが重要です。

1-1. 法令遵守のポイント

著作権コンプライアンスのためには、何が著作物として著作権法で保護されるのか、他人の著作物を無断で使用するなど、著作権を侵害した場合、どのような罰則や損害があるのかという著作権の基礎知識を学ぶ必要があります。

著作物とは、創作者が創意工夫して生み出した創造物のことです。著作権コンプライアンスの実現には、自社が生み出したどのような創作物が著作権法でどのように保護されるかを知っておくとともに、他人の著作権を尊重する必要があります。

したがって、法令を遵守して著作権コンプライアンスを実現するためには、法律の基礎知識だけでなく、他人の著作物を尊重する意義を学ぶことが重要です。

1-2. CSRのポイント

最近では、ほとんどの企業が自社のホームページを持ち、自社の方針や製品、サービスについて、多様な情報を発信しています。

その中では、第三者の著作物を使いたくなる場合もあります。またキュレーションサービスのように、第三者の著作物を使用してまとめ情報を提供したり、共有したりするサービス事業を行う場合もあるでしょう。

なお、ここでの「まとめ」とは個人が勝手に制作したまとめ情報ではなく、企業が著作権法を遵守して、必要なサービスとして提供される正規の「まとめ情報」を指します。

また、ソフトウェアも著作物ですが、不正コピーや違法コピーが問題となっています。そのため、ソフトウェアの権利者の団体は、不正使用に対する警告と情報提供を促す活動をしています。

著作権の問題は、紛争が起こった場合に企業の姿勢が問われるなど、メディアで大きく報道される可能性があります。その際、第三者の著作物に対する適正な扱いをしているか否かがあらわになり、企業のブランドイメージにも影響します。

したがって、CSRの視点からは、著作権侵害が企業のイメージや事業に与える影響について、具体的に認識する教育プログラムが必要です。

参考)
株式会社三菱総合研究所社会ICT事業本部「諸外国におけるインターネット上の著作権侵害対策調査」,2016年12月15日,http://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/chosakuken/kokusai/h28_02/pdf/shiryo_2.pdf
一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会「不正コピー情報受付」,『ACCS一般社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会』,http://www2.accsjp.or.jp/piracy/ (閲覧日:2020年12月2日)
一般社団法人コンピュータソフトウェア倫理機構「違法コピー・海賊版・模造品等に関する情報提供フォーム」,『ECOS』,http://www.sofurin.org/htm/about/form/illegalcopy.htm (閲覧日:2020年12月2日)
BSA The Software Alliance, QUICK END-USER PIRACY QUESTIONNAIRE, https://reporting.bsa.org/r/report/add.aspx?src=jp&ln=ja-JP&utm_source=Google_2A&utm_medium=CPC&utm_content=2A&utm_campaign=Google_PC/SP_Big&gclid=CjwKCAjw7cDaBRBtEiwAsxprXVMDSgsB8BC1IvOlnYz7bQ2JE-j75kEHpm3OwrNdsACfaQklqHZ-rBoCzDoQAvD_BwE&trflg=1&rmai=NEC6RQWF.a5a3b3f70ae0f5&_ebr=2tbfwdojm.1532030455 (閲覧日:2020年12月2日)
公益社団法人著作権情報センター「著作権を無断で使うと?」,『CRIC』,http://www.cric.or.jp/qa/hajime/hajime8.html (閲覧日:2020年12月2日)

1-3. リスクマネジメントのポイント

著作権は、特許権、商標権のように、特許庁などに出願して審査を受けて登録する必要がありません。また著作権者は、著作物を創作した時点で自動的に権利が発生します。この特徴をよく理解しておく必要があります。

たとえば、どんなリスクが発生しうるでしょうか。
まず、他人の著作権を侵害した場合、法人の刑事罰に加え、著作権者からの差し止めによる対象事業の停止、損害賠償の請求による紛争、名誉回復措置による企業イメージへの影響などのリスクがあります。

そのため、著作権コンプライアンスの問題が発生した場合にどのような事業リスクがあるかについて、具体的に理解しておく必要があります。

一方、ほかの企業やライバル企業が、自社の著作権を侵害する可能性もあります。その場合、自社の事業に与える影響を考慮し、必要な措置を取れるように備えておく必要があります。

したがって、リスクマネジメントの視点からは、著作権侵害に対してどのような措置があるかをよく理解したうえで、自社が取るべき「攻め」と「守り」の両面を学べるプログラムが必要です。

参考)
株式会社アシロ「著作権侵害の事例|侵害されたときに取るべき2つの対処法」,『IT弁護士ナビ』,https://itbengo-pro.com/columns/4/ (閲覧日:2020年12月2日)

2. 著作権についての教育設計ポイント

それでは、具体的にどのような点に注目しながら、社員教育プログラムを企画していけばよいでしょうか。その設計ポイントをご紹介しましょう。

2-1. 著作物の定義と適法な利用方法

以下の記事では、レシピの著作権について、料理名、量、料理の手順を示したのみのレシピは著作権法で保護される著作物にはならないが、料理の写真や動画は保護される著作物であることをご紹介しました。

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また、新聞や小説、絵画や写真、TVや映画などは、保護される著作物であることはわりと広く認識されていますが、コンピューターのプログラムやデータベースも同じく著作権で保護されていることを知っておく必要があります。

特に、前述のように、ソフトウェアの不正使用は問題となっています。他人が創作したプログラムを利用する場合、フリーソフトは、利用条件を確認し、遵守しなければなりません。

それ以外の場合は、必ず事前に許諾を得て、その範囲で利用する、というDo’s & Don’ts(何をすべきで、何をすべきでないか)を理解して、実施する必要があります。

したがって、どのような著作物が保護される対象であるか、適法に利用するにはどうすればよいかについて、具体的な事例で学べる教育プログラムが必要です。

参考)
文化庁「著作物について」,『文化庁』,http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/chosakubutsu.html (閲覧日:2020年12月2日)
文化庁「著作物の正しい利用方法」,『文化庁』,http://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/seidokaisetsu/gaiyo/riyohoho.html (閲覧日:2020年12月2日)

2-2. 研修の対象部門

恒常的に他人の著作物を取り扱う部門は、主に広報、宣伝部門や商品企画・マーケティング部門です。

しかし、コンピューターのプログラムやデータベースについては、技術、開発部門が取り扱うことが多くなります。また、営業部門も、ネットで公開されている各種データーやソフトウェアを扱うことが考えられます。

つまり著作権コンプライアンスの取り組みは、すべての部門で必要であり、著作権の教育に関しては全社員を対象にしたプログラムを作る必要があります。

3. 研修の実施例

それでは、著作権法の基礎知識はどのように学習する方法が効果的なのでしょうか。

私がコンプライアンス担当として、著作権コンプライアンスの教材作成のために実施したプロセスを、演習形式にしたプログラムをご紹介します。

3-1. Q&A作成演習

他人の著作物を取り扱う場合は、具体的な利用シーンごとに、Do’s & Don’ts(何をすべきで、何をすべきでないか)を学ぶ必要があります。そのため、以下の記事でご紹介したQ&A作成演習は、著作権法教育でも有効です。

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あらためて説明すると、著作権法のQ&A作成演習は、利用シーンごとに疑問をQ(Question)として集めて、A(Answer)を作成する演習です。

よくある著作権の利用シーンから、「映像の利用」、「ソフトウェアの利用」、「他人の著作物の引用」について、代表的なQ&Aは次のような問題です。

(問題例)

映像の利用Q
新製品を宣伝する展示会で、テレビ局の取材を受けて自社の事業が紹介された番組の録画映像を使用する場合でも、テレビ局の許諾は必要でしょうか?

A:必要です。録画映像を利用する場合は、テレビ局の許諾が必要です。また制作会社が著作権を持っている番組もあり、その場合は、制作会社の許諾も必要です。さらに背景の音楽は、別途、許諾が必要な場合があります。

ソフトウェアの利用Q
ネットでフリーとして公開されているソフトウェアは、どのような場合でも、自由に使えるのでしょうか?

A:フリーと言っても、通常は一定の条件下で利用する場合にフリーであることが多いので注意が必要です。具体的には、表示されている利用条件の内容をよく見て、その条件に従って利用してください。

他人の著作物の引用Q
インターネットのサイトに公開されている情報を適法に引用したいのですが、そのサイトには「無断転載・引用禁止」と表示されていました。この場合は、適法な引用もできないのでしょうか?

A:適法に引用するための条件を満たせば、法律的には引用可能です。しかし、リスクマネジメントの観点からは、ネチケット(ネットワーク利用上のマナー・エチケット)に配慮し、事前に許諾を得るか、他のサイトから引用するのが良いでしょう。

いくつか具体的な質問と解答をご紹介しましたが、これらは次のような方法でQ(Question)を作り、それに対して適切なA(Answer)を作成していきます。

ステップ1
著作権法について、eラーニングや講義などにより基礎知識を聞いた後、これらの問題例を示し、研修参加者が各自で、それぞれの職種や経験から著作権法について疑問に思うQを考えます。

ステップ2
次に、議論がしやすい4~5名程度のグループで、お互いが考えたQを持ち寄り、情報を共有します。そして、なぜ、そのQを選んだのか、どのような疑問点を持っているかを議論します。時間を決めて、一定数のQ(例えば、各グループ5問など)をグループ単位で作る方法もあります。

ステップ3
次に、グループ単位で、各Qに対して、Aの案を議論します。グループでAについて、どのような議論をしたかを発表し、講師を交えて議論する方法と、グループで統一見解のAを決めて発表する方法があります。

このプロセスにより、講師からQ&Aの説明を受けるよりも、自分たちがQを考え、Aの案を議論することにより、著作権法の基礎知識の理解が深まります。

著作権法コンプライアンスは、製品の開発・製造から、販売に至るまでの各当事者が、著作権法の基礎知識を持ち、他人の著作物を尊重する行動を取ることにより実現します。

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4. まとめ

著作権の教育では、「法令遵守」のポイントとして、どのような著作物が著作権法で保護されるのか、第三者の権利を侵害した場合の罰則など、著作権の基礎知識を理解したうえで、他人の著作物を尊重する意義を理解する必要があります。

「CSR」のポイントとして、自社のホームページや製品、サービスに於いて、第三者の著作物を適法に利用するとともに、著作権を侵害した場合のリスクについて理解する必要があります。

特に、ソフトウェアの不正コピーや違法コピーは問題となっており、複数の権利者団体が、著作権侵害が行われていないかについて、第三者からの情報提供を幅広く求めています。

そして、不正使用を発見した場合、警告を発するだけでなく、必要に応じて、弁護士と相談して、差止などの法的手続きを取ることがあります。

他人の著作権を侵害することは、企業のブランドイメージに影響があることを理解する必要があります。

「リスクマネジメント」のポイントとして、著作権は、特許権などのように出願、登録の必要がなく、著作物を創作した時点で自動的に権利が発生する特徴を理解しておく必要があります。

その上、他人の著作権を侵害した場合、法人の刑事罰に加え、著作権者からの差し止めや損害賠償などのリスクがあることを認識しておく必要があります。

著作権コンプライアンスの教育は、以上のポイントが具体的に理解できるプログラムが必要です。また、他人の著作権は、企業のほとんどの部門で、取り扱う可能性があります。

そのため、著作権コンプライアンスの教育は全部門に行う必要があります。

これらを教育する研修例として、Q&A作成演習をご紹介しました。

著作権法を、例えば、映像の利用、ソフトウェアの利用、他人の著作物の引用などの利用シーンに合わせて、Q(Question)を考え、さらに自分たちでA(Answer)を議論しながら考えてみましょう。

それにより、著作権法の基礎知識に加え、個々の業務にどのように影響があるかが理解できます。

また、他人の著作物を取り扱う場合は、具体的な利用シーンごとにDo’s & Don’ts(何をすべきで何をすべきでないか)を理解するのにも有効な研修方法です。

今回ご紹介した著作権法の基礎知識と教育企画のポイントを参照し、自社に適切な著作権法コンプライアンス教育に取り組んでください。

Written by

一色 正彦

金沢工業大学(KIT)大学院客員教授(イノベーションマネジメント研究科)
株式会社LeapOne取締役 (共同創設者)
合同会社IT教育研究所役員(共同創設者)

パナソニック株式会社海外事業部門(マーケティング主任)、法務部門(コンプライアンス担当参事)、教育事業部門(コンサルティング部長)を経て独立。部品・デバイス事業部門の国内外拠点のコンプライアンス体制と教育制度、全社コンプライアンス課題の分析と教育制度を設計。そのナレッジを活用したeラーニング教材の開発・運営と社内・社外への提供を企画し、実現。現在は、大学で教育・研究(交渉学、経営法学、知財戦略論)を行うと共に、企業へのアドバイス(コンプライアンス・リスクマネジメント体制、人材育成・教育制度、提携・知財・交渉戦略等)とベンチャー企業の育成・支援を行なっている 。
東京大学大学院非常勤講師(工学系研究科)、慶應義塾大学大学院非常勤講師(ビジネススクール )
主な著作に「法務・知財パーソンのための契約交渉のセオリー(改訂版民法改正対応)、「第2章 法務部門の役割と交渉 4.契約担当者の育成」において、ブレンディッド・ラーニングの事例を紹介」(共著、第一法規)、「リーガルテック・AIの実務」(共著、商事法務:第2章「 リーガルテック・AIの開発の現状 V.LMS(Learning Management System)を活用したコンプライアンス業務」において、㈱ライトワークスのLMSを紹介 )、「ビジュアル 解説交渉学入門」、「日経文庫 知財マネジメント入門」(共著、日本経済新聞出版社)、「MOTテキスト・シリーズ 知的財産と技術経営」(共著、丸善)、「新・特許戦略ハンドブック」(共著、商事法務)などがある 。

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